不適切な保育事案はなぜ起きたのか?

2023年10月05日

以前にもお伝えしましたが今年7月、吉川市の第二保育所で不適切な保育事案が発生したことを市は発表しました。

具体的な内容としては
(1) 平成 30 年度に 1 名の児童に対して、1 回こめかみを拳でグリグリした。
(2) 令和 3 年度に 1 名の児童に対して、1 回こめかみを拳でグリグリした。
(3) 令和 3 年頃に児童の突発的な行動を制止するため、複数の児童に対して頭を叩く、奥襟を掴んで制止することが複数回あった。
ということですが保育士本人が認めた事案がこれだけだったということで、本当にこれだけだったのかどうかはわかっていません。

市の報告を聞いて私が不思議に思ったのは、保育所内部のコミュニケーションです。保育所と言えば普通に考えて女性が多い職場だと思いますので、雰囲気の良い職場ならコミュニケーションは多いと思うのです。
誰かがちょっとおかしなことをしていても他の誰かがそれを目撃して、所長に報告すると思うのです。そして報告を聞いた所長はその保育士と面談して注意し、何故その保育士がそんな行為に出てしまうのかを確認し、他の保育士と共にどのように対処すべきかを話し合うと思うのです。
それが、そんなコミュニケーションがないままに何年も経過したということがとても不思議でなりません。

9月議会の決算審査に向けて日本共産党吉川市議員団が市に請求した資料を見て、その疑問が少し解けたような気がしました。
市立保育所の職員はこの10年で正職員が7人も減り、非正規職員(会計年度任用職員)が16人も増えているのです。
就学前の子どもたちを預かる保育所の保育士の責任はとても重いと思うのですが、その保育士さんたちが同じ重たい責任を負いながら片や正職員でそれなりの給与が確保され、片や非正規職員で安い賃金で働いている・・・。
そんな現実の中で、良好なコミュニケーションが保たれるのかどうか非常に疑問です。

もっと驚いたのは、職員さんの年齢構成のバランスの悪さです。

上の表をご覧いただけば一目瞭然だと思いますが、第一保育所では職員26名中12名、46%が55~60歳。
第二保育所でも34人中13人、38%が55~60歳です。
そしてその方々がどの世代よりも圧倒的に多いのです。

私は自分もそれなりの年齢ですし、熟練した専門職がダメだと言うつもりは毛頭ありません。熟練者だからこそ持ち得る知識・技術はとても重要なものだと思っています。
採用した保育士を解雇することができないのはもちろんわかっていますし、解雇しろと言うつもりももちろんありません。
市立第三保育所をずいぶん前に民間委託してしまい、市立保育所が2カ所しかない中で人事の刷新が困難なことも十分わかります。そもそも本当は、第三保育所を民間委託してしまったことに問題があったとも思います。
それでも、バランスが問われるとも思います。
事業というのは熟練者だけでもダメ、若手ばかりでもダメなのではないでしょうか。
若手は今求められている保育の考え方を最先端で学んできた皆さんです。
その最先端の知識と熟練した知識・技術と両方がバランスよく組み合わされて、初めてとても良い保育ができるのだと私は思います。
55歳~60歳の比重があまりにも重い現在の人員配置は、あまりにもアンバランスです。
これでは若い職員のみなさんは今の保育に疑問を感じても、発言することもできません。
このバランスを改善するべきだと思います。

市はこの数年意識的に正職員の採用を増やしていて、20代~30代の約半数は正職員だと答えていました。
しかしもっと抜本的な改善に踏み出さなければ、若い職員の方々が堂々と自分たちの考えを発言し、若い保育士さんたちも活き活きと働く職場にはなれないと思います。
人員を刷新し新たな風が吹く職場を作る努力に、市は踏み出すべきだと思います。