災害支援は単なる個人救済ではなく、公共の福祉
興味深い研修を受講しました。
自治体問題研究所・自治体研究者主催、第61回市町村議会議員研修会で、テーマは「災害避難対策の抜本的強化のために」でした。新潟大学で先進血管病・血栓症治療・予防研究に取り組む榛沢和彦先生、日本赤十字北海道看護大学の根本昌宏先生が医学の視点から避難所開設について講義してくださいました。
また避難所の段ボールベッドの普及に取り組む、避難所・避難生活学会常任理事で全国段ボール工業組合連合会防災担当の水谷嘉浩さんからもお話を伺いました。
避難所に段ボールベッドを設置することが災害の二次災害の予防(疾病予防だけでなくメンタルヘルスの面からも)にも非常に大きな意義があることが、様々な角度から語られました。
私が一番興味深いと思ったのは、日本とイタリアの災害救助に対する認識のあまりにも大きな「差」でした。
イタリアでは被災後すぐにまずはトイレが届くそうで、それも日本の工事現場のトイレのような、雨の日は外で傘を差しながら順番待ちするしかないようなトイレとは全然違う、しっかりとしたトイレが届くそうです。
48時間以内にはテントや簡易ベッドも届き生活環境が整うそうですが、キッチントレーラーも来て食堂で温かい食事が提供されるそうです。
なぜそれができるか。
イタリアの大災害の定義は、「子どもが一人でも死んでしまえば、それは大災害」と捉えているそうです。
「災害支援には哲学が必要」と考えられていて、「哲学」との言葉が示すのは「人権」「尊厳」といった意味のようです。災害支援は単なる個人救済ではなく、公共の福祉と捉えられているそうです。
日本では避難所の環境を良くすると長居する人が出てくる、だからあまり環境を整えない・・・みたいな考え方がされがちです。イタリアは「早く復旧した方が結局は安くつく」と考えられていて、被災者にしっかりとした環境を整えることで「復興するための力を養う」ことを目的にしているそうです。
同じように災害の多い国柄でありながら、あまりにも大きな考え方の違いに驚きました。
イタリアは単に理念だけでこんなことを言っているのではないようです。
災害対策の省庁があり、国レベルで大型の備蓄基地を持ち、州単位でもやはり大きな備蓄倉庫を持っているそうです。各州は2500人分のテント・ベッド・キッチンを備蓄することが義務化されているそうです。
日本は「自助⇒互助⇒共助⇒公助」で、まずは自分で備蓄することが求められています。
でも国や自治体が率先してやらないことを、国民が自らするはずがない。国が率先して備蓄して、国民意識を向上させることが大事だとのお話がとても心に残りました。
すごく驚いたのは、災害救助法の運用として内閣府が位置付けている避難所設置の避難者一人当たりの限度額、なんと1日あたり330円です(@ ̄□ ̄@;)!!
この金額を見ただけで、イタリアの崇高な理念からは程遠い、被災者の人権や尊厳への配慮に欠けた災害対策が日本の現実だということがよく分かります。
以前、塩野七生著『ローマ人の物語』を読みました。
全43巻もある大著なので、途中で挫折したままになっていますが💦
戦争に明け暮れた古代ローマ人が遠征先でまず作ったのはトイレだったという話が、とても印象的でした。
何よりもまずトイレを用意し、生活環境を整える・・・。それが結局は一人ひとりを大切にすることでもあり、闘う力を養うためのものでもあったのだと思います。
その末裔であるイタリアの人々の災害対策は、古代ローマから脈々とつながる一つ筋の通ったものがあるようにも思えました。
今日はとても良い勉強ができました。
自治体問題研究所のみなさん、ありがとうございました。