「土の学校」

2021年06月27日

「土の学校」(木村秋則・石川拓治著 幻冬舎)を読みました。
木村秋則さんは、世界で初めて無農薬そして肥料を使わずに「奇跡のりんご」を栽培に成功した方です。木村さんが話した内容を石川拓治さんがまとめて、この本ができたそうです。

木村さんの話は、前にも書いたことがあるかもしれません。
無農薬のりんごを作ろうとして、でもなかなか成功させることができないままに年月が過ぎていき、りんご農家なのにりんごができないのだから生活は困窮を極め、ある日木村さんはいっそ死んでしまおうと山の中に分け入っていったのです。
そして首を吊る気満々で山の中の樹々を見つめているうちに、気が付いたのです。
山の樹々は農薬も使わないし、もちろん肥料も使わない。それでも、美味しい木の実をたわわに実らせる。それは何故なのかと。
そして、山の土を口に含んでみて美味しいと感じ、無農薬のりんごを作る答えをそこに見出したのでした。
・・・数年前に全国で上映された「奇跡のりんご」、それからやはり石川拓治さんが描いた『奇跡のリンゴ「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録』にも、そんなことが描かれていたと記憶しています。

「土の学校」は「奇跡のリンゴ」の本を読み、映画を観たころに買って、そのまま私の本箱の中に積読状態だったものですが、このところ農業への関心が再燃し、引っ張り出して読んだものです。

「土は人間の食を生産する母体。そこにはバクテリアだとか菌類だとか、無数の微生物が存在して、人間の命を支えている。縁の下の力持ち。その土の豊かさは肥料分ではなく、そこで活動している微生物と、植物の関係で決まるのではないか」。
木村さんはそんな風に考えているそうです。
農業の教科書的に言えば、土には窒素とリンとカリウムが必要で、それを施すことによって土が豊かになり、野菜や果物が収穫できると考えているけれど、本当にそうなのか。
植物に必要な栄養分は、その土の中に住むバクテリアや菌類が生命の営みの中で自ずと生み出してくれる、栄養分を外から与えることが豊かさではなく、土の中の豊かな生命の営みを保障することこそ本当に大切なこと・・・。
まぁ、そんな意味かな。

「インターネットの世界には、気が遠くなるほどの知識がたくさん詰まっている。けれどもこれから先、どんなに技術が進歩して、さらに膨大な知識を詰め込んだとしても、私が今向かい合っているりんごの木の性格については、そこには何も書かれていない。本当の意味で自然と付き合うには、一対一で生身の心と体で、自然と向き合うしかない。知識はその付き合いのためのガイドブックの役割は果たすが、いくらガイドブックを読んでも、それはし全都付き合っていることとは全く違う」。
「土を知るには、土まみれになるしかない」。

なるほどなぁと思います。
木村さんの言葉は単に農業の土の話ということではなく、もっと深い哲学の話だと感じます。

読みやすい本です。おススメです。