「慰安婦」問題から憲法を考える~9条の会@よしかわ学習会~

2019年11月10日

昨日は9条の会@よしかわ主催の学習会が、おあしすミーティングルーム4で開催されました。
講師は元参議院議員、現在は「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナール代表を務める吉川春子さんでした。とても良い勉強ができました。

吉川さんは4期24年の国会議員の間、労働法制・女性の人権・市民の人権の問題について主に取り組まれました。慰安婦問題については『戦時性的強制被害者(慰安婦)問題解決促進法案」を野党3党で提出しました。しかし国会議員中はとても忙しく、慰安婦問題については十分取り組めなかったとの思いから、引退後「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナールを立ち上げました。

「戦争」と言うと多くの日本人は「原爆を落とされた」「空襲で焼かれた」「たくさんの人が死んだ」と、受けた被害の大きさを思い浮かべます。だから、悲惨な戦争を二度と繰り返してはならないと考えます。
しかし日本は紛れもなく戦争を仕掛けた側であり、加害責任があります。
日本人が戦争加害者であることを日本人に知らしめたのが、元「慰安婦」の金学順(キム・ㇵクスン)さんでした。
性暴力の問題においては、加害者よりも被害者が蔑視されるのが今の社会です。
そんな社会の中で、金学順さんは日本政府に補償を求めて立ち上がったのは、戦争が終わって半世紀も過ぎようという1990年代に入ってからのことでした。

日本は上海事変・日中戦争・アジア太平洋戦争中、占領・支配地域にたくさんの「慰安所」を開設していました。
なぜ慰安所が開設されたのか。吉見義明・中大教授らによると、
①兵士の性病予防
シベリア出兵(1918~1922)では、戦死した兵士の数よりも性病罹患兵士の数の方が多かったというデータが残されているそうです(陸上自衛隊衛生学校「シベリア出兵戦死・戦傷・戦病報告書(1918~1919)」)。
②強姦防止
強姦は国際的顰蹙を買うだけでなく、中国人は強姦に激しく反発するので、侵略・占領の治安維持上大問題となりました。
③将兵の「慰安」
兵士の軍隊内、戦場でのストレスを緩和する必要がありました。
④防諜
兵士が遊郭を利用することで軍隊の情報が漏れることを防ぐために、「慰安所」が必要でした。


金学順さん以降、日本軍による性暴力の被害女性たちが次々と沈黙をやぶり、日本政府に謝罪と賠償を求めて裁判を起こしました。しかし、国家無答責や除斥期間、二国間条約等で解決済みといった理由で全て棄却されています。
しかし1998年の下関判決は「従軍慰安婦制度は、徹底した女性差別、民族差別の表れであり・・・女性の人格の尊厳を根底から侵し、現在においても克服すべき根源的人権問題であることも明らかである」としています。

「慰安婦」制度を可能にしたのは、戦前の「家父長制」でした。
女性は子孫を産む性と、男性の享楽に供される性(醜業婦)に二分されていました。醜業(売春婦)に従事する際も「慰安婦なる際も、戸主の許可が必要でした。貧困を理由に、父親が遊郭に女子を売ることも合法とされていました。内務省と軍隊は遊郭の女性の前借金を肩代わりして、海外の「慰安所」に送りました。
こんなことが公然とまかり通っていたのです。
良妻賢母と貞操を求められ家庭を守る性と、男性に買われる性。
女性の人権が否定され、性が蔑ろにされ、その延長線上に「慰安婦」問題があったのです。男性の性的欲求は制限することができない、だからそれを満たすために一部の女性が差し出される、しかもアジア諸国の女性をそのために利用して平気だった時代がかつてあったということ。

その事実が、とても苦しく胸に迫ります。

今回初めて知ったことですが、日本は終戦直後の8月18日、米兵のための慰安所を作ったそうです。
戦後真っ先に政府が取り組んだことがそんなことだったとは!!
本当にショックでした。

女性への暴力をなくす道、ジェンダー平等社会を実現するために、女性の経済的自立とあらゆる政策決定の場に女性が進出することがとても重要だという吉川春子さんのお話、深く納得しました。