『少女の私を愛したあなた』

2020年07月23日

辛い本を読みました。
『少女の私を愛したあなた』(マーゴ・フラゴソ著 稲松三千野訳 原書房)です。
440ページもある上に、字も小さく、そして何より内容がとても辛く、なかなか読み進めることができませんでした。読み終えるまでに多分1週間以上かかりました💦

7歳の少女が51歳の男性と出会い、母親と共にその家に招かれます。
男性の家は子どもの楽園のような家でした。
精神疾患を抱える母。
父は多分一生懸命病気の妻を支え、家族を何とか支えようとしているのだろうけれど、怒鳴ったり、モラハラを繰り返すような、そんな感じの男性です。
そんな生活の中で母子ともに男性に魅了され、男性の家に入りびたりの生活になっていきます。
そして母親は男性を信頼し、少女を任せきりにする中で、男性は少女に性暴力を繰り返すようになっていきます。
2人の関係は、男性が自殺するまで15年間も続きました。
少女は途中で自分たちの関係がおかしいと気づかなかったわけではありません。
10代後半からは明らかに、男性がペドファイル(小児性愛者)であると理解していましがた、男性と離れることもできませんでした。
それほどまでに少女自身の家族が崩壊していて、少女には安らげる居場所がなかったのです。

実は男性も子どもの頃に虐待を受け、確か9歳のときアナルセックスを強要されるという辛い体験もしています。
精神疾患を患う母親も、子どもの頃に性的虐待を受けています。
こうした環境の中で少女は性的虐待を受けながらも、男性との共依存のような生活を15年もの長きに亘って続けていったのでした。

この本は、著者自身の体験を描いた実話だということです。
幼い少女に対する制虐待の描写は非常に生々しく、痛々しく、読んでいてとても辛いものがありました。
それでいて、二人の関係は年齢があまりにもかけ離れた男女の恋愛物語ででもあるかのような描かれ方をしています。
途中で私は、この著者はなぜこの本を書いたのだろうと疑問に思わざるを得ませんでした。

でも最後まで読んで、よくわかりました。
あとがきには、こう記されています。
「私はこの本に記憶を書き留めることで、家族が何世代にもわたり悩まされてきた、苦しみと虐待という、古く根深いパターンを壊すことに取り組んだ。執筆を通してひとつわかったのは、祖父母が、子どもだった母と伯母が受けた性的暴行に、堂々と対処しなかったがために、心の傷が放置されたまま次の世代に伝えられたのだということだ。母は、トラブルに気づく方法や、トラブルから私を守る方法がわからなかった。祖父母は、黙って忘れるようにと言うことで、多分娘たちがそれ以上傷つかないように守ろうとしたのだろうが、私の物語こそが、祖父母が悲劇的に間違っていた証拠である」。
「秘密にしたから、ピーター(ペドファイルの男性)の世界は繁栄してしまった。沈黙と否認は、あらゆるペドファイルが真の同期を隠し続けるために頼る、まさに力になる」。
「性犯罪者は私の家のような、問題のある家庭の子どもたちを探しているが、平均的な家族をだまして、自分のことを地域社会の平凡な一員だと、そればかりか立派な一員だと信じさせることもできるのだ。ペドファイルは自己欺瞞にも長けているから、人をだます名人だ。彼らは自分をごまかし、自分のしていることは無害だと信じている」。

なるほど。
著者はこの本を書かなくてはいけなかったのだと思いました。
この本を書くことによって、自分自身に起きたことが何だったのかを整理し、客観的に見つめ、そして昇華し、そしてようやく癒されたのだと思いました。

世界の20か国以上で翻訳出版されているというこの本。
それほど、世界中でペドファイルによる性暴力被害の問題も深刻なのだと思いました。