『電通 巨大利権』

2021年08月12日

昨日、約5時間の移動時間で読んだ本は『電通 巨大利権』(本間龍著 CYZO)でした。
とても面白い=興味深い本でした。

電通の前進となる日本広告及び電報通信社が創業されたのは1901年。今から100年以上前の話です。
その後日本電報通信社と社名を変えましたが、同社は太平洋戦争を進める上で世論捜査というとても重要な??役割を果たしました。
そして戦後は政府やGHQに食い込み、更に満州や上海から引き揚げてきた軍人や旧満鉄職員を積極的に採用し、その人たちの政界復帰・政府要職復帰に伴い政界との結びつきを再び強化した・・・。
そして今や、日本のメディアを支配する電通。
電通は戦後日本のメディア4媒体(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)の全てで売り上げシェアNO1であり、しかも不動。特に一番強力な媒体であるテレビのシェアは4割近くに上るとのこと。メディアの経営のほとんどは広告費で賄っていて、そのスポンサーを最も多く連れてくる電通はスポンサーよりも上位の存在であり、メディアも常に顔色をうかがう存在。
電通が担当する主なスポーツイベントは、①オリンピック ②アジア競技大会 ③サッカーワールドカップ ④サッカークラブ選手権 ⑤世界陸上選手権 ⑥世界水泳選手権 ⑦バレーボール世界選手権 ⑧ラグビーワールドカップ など、大型の国際スポーツイベントのほぼ全て。
こうしたスポーツイベントはイベント実施の費用よりも、それを支える多くの企業からのスポンサード料とテレビを中心とする放映権料収入が巨額で、あらゆるメディアの結びつきを強固にしている。
そしてこうしたスポーツイベントを遅滞なく実施するためには相当な人員とノウハウが必要で、今あらゆるイベントが電通に集中しつつある・・・。

その電通は2016年の「ブラック企業大賞」を、ネット投票により圧倒的大差をもって受賞するという超ブラック企業。
2015年のクリスマスの日の電通新入社員、高橋まつりさんの自殺が2016年に過労死として労災認定されたことは記憶に新しく、そのほかにも同年、電通は100社近い会社に対し不正請求をしていたことが発覚しています。

こういう会社が東京オリンピックを担当し、一方で巨額の富を得ながら、無償のボランティアスタッフを募る。
しかも、酷暑の東京での屋外活動に・・・。
この愚かさを著者は鋭く問いかけます。
ボランティアの元々の語源は「志願する」「志願兵」という意味であり、決して無償奉仕を指す言葉ではないのに。ボランティアに求める質も「1日8時間、10日以上」「採用面接や3段階の研修を受けられる」「外国語が話せる」といった内容で、非常に高いレベルを要求しているにもかかわらず・・・と💦

でも一番怖いのは、安倍晋三元首相や菅首相などの改憲派が狙う憲法改定への国民投票への電通の関与です。
2007年に制定された国民投票法の最大の問題点は、国民投票運動期間における広告宣伝に関して「投票日から14日以内のテレビCM放送禁止」以外はほぼ何の制約もないことにあると著者は言っています。
広告宣伝に投入できる資金の上限すら決められていないと。
カネのある方は期間中無制限に広告宣伝を打つことができ、カネの無い方はメディアで何も主張することができない。
国民投票法が国会で発議されると、そこから最低60日、最長180日間の「投票運動期間」となり、衆参の選挙運動期間の約2週間よりかなり長い。そしてこの運動期間中、賛成・反対派共にあらゆるメディアで無制限に広告を展開することができるそうです。
衆参の選挙でメディアに投入される金額は500億円程度で、国民投票には少なくともその数倍のおカネが投入されることになり、メディアにとっても巨額の臨時収入が見込める一大イベント。
そして、改憲派の宣伝広告を担当するのが電通。
その電通は既にメディアを支配しているので、圧倒的有利に改憲に向けての宣伝を展開することができる・・・💦
そういう話です。

「第4の権力」と言われるメディアを支配している電通は「第5の権力」と・・・。

・・・怖い話だ💦