『"声なき女"八万人の告発―従軍慰安婦』

2023年01月09日

若い時に読んだ本は、ただ「読んだ」という事実ばかりに重きを置いていたような気がします。
本の内容を理解しようにも、知識と経験が浅すぎて十分な理解ができなかった・・・💦そんな本がたくさんあったと思います。学生時代や独身だったころに読んだ本をもう一度読み返してみて、こんなにも深い内容の本だったのかと改めて気付かされることが度々あります。
昨日読み終えた『"声なき女"八万人の告発ー従軍慰安婦』(千田夏光著 双葉社)もそういう一冊でした。
学生時代に読むは読んだけれど・・・💦
大日本帝国や軍国主義の日本はどういう国だったのか、日本があの侵略戦争で何をしようとしていたのか、そもそもどういう戦争だったのか、戦時性暴力や国家的な性の搾取、戦争とは一体何なのか、貧困と女性の性などなど。学生の頃はあまりにも浅薄な知識しか持ち合わせていなかったので、こんなに大切な本を読みながら何一つ身についていなかったことに今更気付き、すごくショックでした💦
昭和48年に出版された本ですが、今「慰安婦」問題について言われている大半のことはこの本に既に描かれています。

以前、戦争で過酷な状況に陥ると男性は食欲よりも性欲の方が強くなる、それが本能だと学んだことがあります。死に直面した時、遺伝子を残すことの方に本能が働くのだと理解しました。
恐らくそれが事実なのだと思いますが、戦況が熾烈になればなるほど兵士の性病が増えるそうです。日本では1918年のシベリア出兵で多くの兵士が性病を患い、軍隊の力を弱体化させてしまった悲しい歴史があるそうですが、こうした傾向は日本だけでなく世界各国が共通に持つ傾向とのことです。
アメリカの兵士なら数カ月戦えばゆったりと休暇を楽しみ、そこで性の処理もできるところ、休暇の保障もない日本兵には性病を予防するために兵士たちの性をコントロールする必要があったこと。性病を予防するためには性交体験のない若い女性が必要で、当然のように独身の朝鮮人女性に目が向けられていったこと。
皇軍が慰安婦を持つことは恥でもありつつ、民間に任せきりにしてしまうと性病の予防ができないので、民間に任せつつも軍医による感染予防対策が常に求められたという矛盾に満ちていたこと。
万単位の兵士に対し、「慰安婦」は多くても20人程度。兵士一人当たりの時間は30分に限定され、脱いで良いのは下半身だけ、女性を選ぶ権利も当然なく。
ただただ性欲の処理だけのためと「慰安婦」の人々は、軍医が書いた正式な文章に「公衆便所」とまで書かれ、その認識のひどさは正直気持ちが悪いです💦
朝鮮人の慰安婦たちが騙されて連れて来られたのだと話しても、誰もそんなことに気に懸けたりはしない💦
敗戦後、日本兵ですら帰還が困難だった時代を南方に連れて行かれた「慰安婦」たちがどう生きたのか、果たして無事に帰還できたのか、出身地である朝鮮に帰り幸せを取り戻すことができたのか・・・、ほとんどの人がそんなことを気に掛けていません💦
敗戦後すぐに、内務省と大蔵省は共同して「特殊慰安施設協会」(RAA=レクリエーション・アミューズメント・アソシエーション)なるものをつくりました。かつて日本が侵略した国で女性たちを犯したように、連合国もまた日本の女性たちを犯すに違いないとして作られた慰安所です。
その費用は当時のお金で約5千万円、内3300万円(昭和48年当時で500憶円以上、今ならいくらなのか???)を勧銀が融資したとのことで、「これだけの金で日本女性の貞操を守れるなら安い」と、当時主計局長だった池田勇人が語ったとのことです。しかしそこに集められた女性たちの6割は家族と家を失い、行く当てのない「戦争犠牲者」。
しかもその女性たちは身体を売らされることや、一日に20~30人もの男性を相手にしなければならないことは一切知らされないまま応募し、一旦慰安婦にされてしまうと今度は逃れられないようヤクザに監視され・・・💦

千田夏光さんの指摘は本当に鋭いと思います。
「問題はそうした女性の悲劇性ではなく、発想立案した内務官僚自体の中に潜むものが、昭和12年華中戦線で"慰安婦"なるものを初めて立案した軍幹部と裏返しに共通していることだ。」
「昭和二十一年三月十日GHQの圧力で、結局は解散させられることになった"RAA"に、その時点で5万人の"慰安婦"がいたが、この時国は全く責任を取らなかったのである。軍の慰安婦の処理の仕方と同じであった。集まった女性は自暴もあるし自棄もあったろう。あるいは売春婦からの転職もあった。しかし勧誘の際"国"のため"人柱"になることを説き、"民族の純血を百年のかなたに護持"を課命し、さらに"血盟"まで口にした女性のはずである。解体後の面倒を見る義務が"国"になかったと言うのだろうか。亅
「こうして見ると、戦争という極限の場において体制者、支配層が見せる姿勢が浮き彫りにされてくる。彼らは常に最も弱い階層に苦渋を正義の名において求め正義が倒れたとき塵埃のごとく恢復のごとく捨て去る。RAAから捨てられた女性はすべてと言っていいほど街娼へと落ちて行った。」
政府には、身体を売るしかない貧しい女性の存在が実に都合が良い・・・💦そんなことが改めて浮き彫りになる一冊です。
特に杉田水脈さんにオススメしたいかな。