児童虐待防止のための子どもの見守り訪問

2020年08月03日

7月31日に開催された臨時議会では、虐待防止の観点から子どもの見守りを強化するための業務委託料300万円の補正予算が提案されました。
厚生労働省は、「新型コロナウイルスの影響で 学校等の休業や外出自粛が継続する中で、子どもの見守り機会が減少し、児童虐待リスクが高まっている」「 今後も、地域によってはこうした状況が続くことが見込まれる」として、『子どもの見守り強化アクションプラン』を提起しています。

「様々な地域ネットワークを総動員して、 支援ニーズの高い子ども等を定期的に見守る体制を確保し、児童虐待の早期発見・早期対応につなげる」としています。国のこの方針を受け、吉川市でも市内の社会福祉法人さんに業務委託して、見守りの強化を図っていくというものです。
夏休み期間中の取り組みとなりますが、冬休み・春休みにも取り組むとのことで、300万円の予算は年間をとおしての予算です。
大きな金額が動くかのようにも見えますが、感染対策や訪問時に持参する食材や日用品などの費用も含まれています。委託される事業者さんにとっては負担や責任の方が重いような金額かもしれません。

それにしても、なぜ今こんなにも虐待が問題になるのでしょう。
勿論、以前は家庭内の問題として注目もされなかった問題が、今になってようやく社会問題として光が当てられるようになったということは事実だと思います。
「以前は虐待なんてなかった」なんてことは、勿論ありません。
でもやはり、今問題視されるのは経済的な要因と虐待との関連というところではないでしょうか。。
貧困家庭が子どもを虐待するという意味ではありませんので、誤解のないようにお願いします。
ただどうしても、経済的に追い詰められる中で「無理心中」のような究極の子ども虐待も発生していますし、追い詰められた精神状態が容易に暴力と繋がっていくという傾向も否定することはできません。
子どもの7人にひとりが貧困。母子家庭の貧困率が5割を超え、母子家庭の13.3%が貧困ラインの半分以下出暮らす「ディーププア」世帯と言われています。
そして今回のパンデミックが、こういう貧困世帯ほど強く深刻な影響を受けていると言われています。
こうした母子家庭の現状、女性の労働と賃金の問題を解決せずに「貧困対策」「虐待防止」と言っても、それは意味を持たないように思います。
なぜパンデミックで、一番弱いこうした世帯の方々が影響を受けるのか、より困窮せざるを得ない状況に追い込まれるのか・・・。
こうした問題に手を打たなくては、「貧困対策」も「虐待防止」も単なる「絵に描いた餅」に終わってしまうのではないかと思います。

吉川市では6月議会で「ひとり親家庭等家計応援臨時交付金」の補正予算が上程されました。
令和2年6月分の児童扶養手当の支給を受けている方で、令和2年7月1日現在、吉川市に住民登録のある方や、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて家計が急変したご家庭などを対象に、1世帯当たり2万円の給付を行うものです。
また家計応援子ども券として、支給対象者が監護または養育する児童1人につき5,000円の商品券が配布されました。

今回の臨時議会でも、ひとり親世帯に対する一時金の給付が一世帯5万円、第二子以降一人に着き3万円が給付されることになりました。
それでも、本当に困っているご家庭にとっては焼け石に水のような金額かもしれません。
本当に大切なのは、困っている人々が今すぐに生活保護を申請し、受給することができる仕組みなんじゃないかと思います。
そして受給しても偏見に晒されることなく、生活の立て直しをすることができて、また自立した生活に戻っていく・・・。
そんな仕組みを作って行くことが大切なんじゃないかと思います。
一旦は貧困に陥っても、もう一度再び生活を取り戻すことができる、だから誰もが安心して生きていける・・・。

そんな仕組みができると、とっても良いと思っています。

もう一つ、誰にこの「見守り訪問」という事業を担ってもらうかという問題もあると思っています。
今回は市内で子ども食堂なども運営している、社会福祉法人さんにお願いするということです。
でも子どもの虐待に最も強い人って、保育士とか幼稚園の先生とか教職員の皆さんとか、後は児童福祉施設で働く人じゃないかと思います。あとは小児科医やそこで働く看護師さんとか。
子どもの虐待を見るうえでは、子どもの発達との関連でみる視点も欠かせませんし、虐待を発見したときに子どもや親とどのようにコミュニケーションを図るかが問われると思うのです。
その時に専門職の方々が偉大な力を発揮するのではないかと思います。
今回依頼した社会福祉法人さんが良いとかダメとか、そんな判断を下す立場にはありません。
ただ、非常にシビアな課題を前にしたときに専門職の知見、経験知は非常に重要だと思います。
大阪の茨木市では、保育士さんたちにこうした仕事を担っていただいていると聞いています。率直に、素晴らしいなぁと感じます。