映画『主戦場』

2022年07月30日

1週間以上前の話になってしまいましたが、「慰安婦」問題とジェンダー平等ゼミナール(代表:吉川春子さん)が主催した映画『主戦場』の上映会に参加しました。

『主戦場』という題名から、私はこの映画が沖縄戦を描いたものだと何故か思い込んでいましたが、全然違って「慰安婦問題」に纏わる論争をリアルに描いた作品でした。
非常に難しい映画でしたが、長年慰安婦問題に取り組んできた弁護士の大森紀子先生が論争について概説してくださったので、何となく理解することができました。

「慰安婦」問題は歴史修正主義者にとってどうしても日本の歴史の中の「汚名」をそそがれなければならない問題で、「慰安婦」問題をなきものにしたいとの強烈な思いがあります。
そのための闘いはまず日本で行われ、日本では既に勝利したので「主戦場」はアメリカに移ったと彼らは考えていて、それがこの映画の題名にもなっているわけです。
そして
①慰安婦問題とはそもそもどのような問題なのか
②被害者は「慰安所」で自由を奪われ、「生奴隷状態」であったかなかったか
③「強制連行」があったかなかったか
④歴史学者の言う「最大で20万人」をどう見るか・・・。
こうした点についておびただしいニュース映像などを織り交ぜながら、櫻井よしこ・杉田水脈・ケントギルバートなどの歴史修正主義者と歴史学者の吉見義明さん、「女たちの戦争と平和資料館」事務局長の渡辺美奈さんらの発言が次々と展開していきます。

私にはどうしてもわからないのは、何故事実を覆い隠すのかということです。
日本が「慰安所」を戦地・占領地に置き、そこで「慰安婦」たちに性的奉仕をさせた事実は疑いようのない事実です。
千田夏光さんが『従軍慰安婦』という本を書いたのは1973年。
私は1980年ころにその本を読み、大変な衝撃を受けたことを今も忘れられません。
『赤瓦の家ー朝鮮から来た従軍慰安婦』(川田文子著 筑摩書房)、『マリアの賛歌』(城田すず子著 日本基督教団出版局)、『イアンフと呼ばれた少女』(川田文子著 高文研)などなど、事実と調査に基づいて従軍慰安婦について書かれた本は多数です。
「慰安婦などという事実はない」と言う人々は、こういう本を一冊でも読んで発言しているのでしょうか。
何故、事実をなかったことにしなければならないのでしょうか。
当時自分が生きていて「従軍慰安婦」という制度に積極的に関わった人間だったとしたら、確かにとても恥ずかしく、なかったことにしたいと思う気持ちはよくわかります。
しかし当時生まれてもいなかった杉田水脈や櫻井よしこ、更に何の関係もないケントギルバートまでが歴史的事実を歪曲する気持ちは、到底理解することができません。

何故事実を認めないのでしょう?
事実を受け止めて、二度と同じ過ちを繰り返さないようにする...、何故そういう立場に立てないのか、どうしてもわかりません。
こんな話をしていたら、友人から「従軍慰安婦って売春婦もたくさんいたんでしょう?」と聞かれました。
確かにもともと売春婦だった人もいたかもしれません。それでも「売春」と「従軍慰安婦」とは全く違うものだと思います。「売春」をしていたから「従軍慰安婦」にさせられて良いとは、到底思えません。
従軍慰安婦の方々は、午後2時から夜10時まで「レイプ」と言う仕事をさせられ、休憩時間は夕方6時~30分だけしか与えられなかったそうです。1日に12~20人、多い日には40人もの男性を相手にさせられたそうです。
女性たちは膀胱炎や性器がパンパンに腫れ上がり、張り裂けんばかりの痛みに耐えながら働かされ、子どもを産めない身体になった女性もいたそうです。
こんな状態を想像するだけでも胸が痛みます。
自由を奪われ、意に反することを強要された女性たち。
これを「奴隷」と呼ばずになんと呼ぶのでしょうか。

『主戦場』、ぜひ一人でも多くの方に観ていただきたい映画です。