52名の傍聴者が見守る中、旭小学校統廃合の議案が可決
9月15日の本会議では、9月議会に上程された議案の採決が行われました。今議会一番の注目議案は、2028年4月に旭小学校を関小学校に統合する議案でした。この議案に対し、「旭小の未来を考える会」発起人から「旭小学校統廃合に関する公正かつ透明な意思決定を求める陳情書」が3755筆の署名を添えて提出されました。また当日は52名もの市民が傍聴に訪れ、傍聴席はいっぱいとなりました。
6名の議員(松崎誠議員・岩崎さゆり議員・吉川敏幸議員・岩田京子議員・雪田きよみ・遠藤義法議員)が反対討論をしたのに対し、賛成討論は3名でした。しかし採決では反対9名(共産党・平和市民クラブ・自民党・無所属)、賛成10名(未来会議・SELECT吉川・公明党)、賛成多数で可決してしまいました。
私の反対討論をご紹介します。
「少人数だとコミュニケーション能力が育たない」は事実か?
市は旭小学校統廃合の理由として、少人数だと「コミュニケーション能力が身に付きにくい」「将来的にコミュニケーション等の不安がある」と説明をしています。しかし子ども教育常任委員会でその根拠、科学的データを問うと、「エビデンスはない」と明言しました。
根拠もなくこんな発言を繰り返し、しかも旭小学校統廃合の理由の筆頭に掲げるということに強い憤りを覚えます。旭小学校の児童、卒業生、地域にお住いのみなさん、そして全国の小規模小学校やその地域のみなさんに対して非常に失礼です。どんな子どもにも可能性があり、それを伸ばすために力を尽くすのが教育ではないでしょうか。将来にまで亘って不安があるというのは単に侮辱的であるだけでなく、教育の放棄でさえあると考えます。
決定プロセス・教育委員会の機能の問題
昨年11月に開催した市長キャラバンでは、市として最も持続可能で現実的な方向性として「旭小学校・三輪野江小学校をそれぞれ関小学校・栄小学校に再編する案」について、保護者や地域のみなさまにお示しし、ご意見を伺ったとのことです。しかしこの案は、いつ・どこで、どのようなメンバー構成で、どのような議論を経てまとめられた案だったのでしょう。
こども教育常任員会では、市長部局と教育部局の日々様々な調整、市長キャラバンが 1 回終わるたびに振り返りの話し合いを行い、最も持続可能な案として教育の方から示したとの答弁でした。
しかしその記録は残されてなく、どのような教育的見地、思考過程を経てこの案がまとめられていったのかは全く不透明です。
しかも既に市長キャラバンで案を示し、PTA説明会まで開催された後の今年2月になって初めて教育委員会で議事録に挙げられ、話し合っている状況です。
教育委員会は市長部局から独立した行政委員会であり、政治的中立性の確保、継続性・安定性の確保、地域住民の意向の反映を目的とした組織です。その独立性・中立性が保たれ、機能がきちんと果たされている状況とは、本当に残念ですが言えません。
学区審議会で地元の代表者が反対を表明している中での採決
6月2日に開催された学区審議会では、旭地区の代表者が「旭小学校区の住民・保護者に対して十分に説明されているとは思えない。地元の保護者の方も恐らく納得されていないと思う。編入はまだ早すぎる」と質問しました。事務局は「地元説明会については複数回実施してきた」「自治会から要望をいただき、現在検討している」と答弁しました。
更に意見聴取でも「旭自治連合会会長として旭地区のみなさまの意見を聞く中で、統合については賛成の方もいますが、反対の方の方が全然多い」と反対の意を表しましたが、こうした意見について話し合うことなく、すぐさま採決に入り可決してしまいました。
自治会への説明会を検討しているのなら、それが終わって地元のみなさんの納得を得てから進めるべきではないでしょうか。何故、地元の大事な意見について検討する時間を持たなかったのか、理解することができません。
賛否両論、様々な意見がある
市は今年1月下旬のPTAとの合同説明会の中で、「現在の3年生、当時の2年生の9人の保護者からは『すぐにでも統合してほしい』という話があった」「市長キャラバンから1年以上たったのに、なんでこんなに遅いんだ」という意見もあったと報告しています。子育てをする中で、そうした不安や焦燥感を抱くことは十分理解することができます。
ただ市の説明は9人の保護者全員が統合を望み、しかも早急な統合を要望しているような印象を与えています。
しかし8月24日におあしすで開催された説明会では、「9人全員が望んでいるわけではない」「9人の保護者の中にも反対意見もある」と説明しました。
8月24日の説明会では、「まだまだ十分な説明がないまま廃校を先急がないでください。伝統ある旭小学校は、住民にとって本当に大切な場所です」という、旭小学校OBの手紙が読み上げられました。また旭小学校4年生の児童からも、「伝統のある旭小学校の歴史を壊さないでください。旭小には榎、そして最近作った遊具もあります。せっかく作ったのに、公園にしたくありません」という手紙も読み上げられました。
住民には賛否両論があり、様々な意見があります。なぜ統合を望む声だけを取り上げて統廃合を進めようとするのでしょうか。
住民の気持ちが軽視されている
説明会で「なぜこんなに急ぐのか」との質問を受け、市は「早くしないと現在9名の3年生が卒業してしまう」「9月議会で議決しないと、令和10年4月に合わせてスクールバスを小学生に合わせた仕様にするのに間に合わない」と答弁しました。住民の気持ち、納得が置き去りにされています。
本会議で遠藤議員が、旭小学校の未来の会未来を考える会発起人から市議会に提出された「旭小学校統廃合に関する公正活動面な意思決定を求める陳情書」が 3755 筆を超えているとお伝えし、陳情書に対する市の見解を求めました。その答弁は「市議会に提出されたものであり、市議会での審議を注視する」という非常に残念な答弁でした。これほど多くの方が「市の進め方は拙速だ」と感じている、その事実を真摯に受け止めていただきたいと思います。
子どもの権利が蔑ろにされている
6月議会一般質問で、岩崎さゆり議員は子どもの意見表明権について質問しました。市の答弁は「子どもたちが緊張しないように、ジャージ等に着替え、給食の時間にみんなで一緒に食べながら、雑談をする中で話を聞いた」と答えました。しかし、直接統廃合に関して是非を問うような質問は投げかけてはいないとも答弁しました。
一番肝心な問題に口を閉ざして子どもたちの意見を聞いたところで、それが子どもの意見表明権を尊重したことになるはずがありません。
3月議会のこども教育常任委員会では、この子どもたちへの意見聴取で「大勢でやってみたいことはドッヂボールやサッカー、リレー。クラス替えにも興味がある」との声があったとのことでした。しかしそう話したという事実と、統廃合したいということとは隔たりがあるということも直視すべきだと思います。
自治会への説明会の問題
下内川自治会は住民説明会の開催を求めましたが開催されず、しかし下広島自治会では開催されました。こども教育常任委員会でこの事実について質問したところ、「下内川自治会及び拾壱軒自治会から日程を指定した上で住民説明会の開催が要望されたが、旭地区10自治会に同じ内容を正しくお伝えすることが望ましいと考え、7月25日の旭地区住民説明会に至った」とのことでした。そして「下広島自治会はそこにお住いの教育長から『5 月 19 日と同じ話を自治会でしてほしい』『説明原稿を渡してもらいたい」とのお話があり、職員が私的に出向き、説明をしたとのことでした。
誰から依頼されたかによって対応が変わること、住民要望には応えない姿勢に問題があります。私的に出向いたと言っても説明文書は公的なものです。それを「私的な活動」と捉えることは非常に困難です。
教育大綱の問題
吉川市の教育大綱は「家族・郷土を愛し、志を立て凛として生きてゆく」です。個人的にはこの教育大綱は好きではありません。それでもこれが吉川市の「教育・学術・文化の振興に関する総合的施策の基本方針」です。
市が発行している『吉川市史』には旭小学校、そしてその前身の郁文学校の歴史が詳しく記されています。まだ義務教育が有料であった時代に郁文学校は授業料を安く抑え、その結果授業料が高くて学校に通えない子どもがいないことなどが郡の記録に残されています。旭地域がいかに子どもの教育を大切にしてきたかがよくわかり、地域のみなさんが旭小学校を大切に思う気持ちがよくわかる記述です。
8月24日の説明会では、参加者の方から「こうした旭地域の素晴らしい文化を、教育委員会のみなさんは仕事として壊すんですよね?」と、とても辛辣な批判がされました。
こども教育常任委員会での私の質問に対し、市は「本市の学校教育のこれまでの歴史を見ると、子供たちのより良い未来に向けた転換点として統廃合や分割を行ってきた歴史的事実が残されている。今後、統廃合の事実を市の歴史・学校の歴史として残していきたいと考えている。これが教育大綱でいう郷土を愛しという部分とも異なることはない」と答えました。
そうではありません。子どもたちや地域住民のみなさんの気持ちを蔑ろにして、果たして「郷土を愛」することができるでしょうか。郷土を愛せるような、住民の理解・納得の上の市の施策こそが求められているのではないでしょうか。
以上様々な問題を考えた時、本来なら何の決定機関でもないはずの市長キャラバンで統廃合の方針が決定され、教育委員会も教育部局もひたすら後追いで、辻褄を合わせるために奔走してきた様子が見て取れます。本来ならこうした一つ一つの観点から、小規模化と学校の在り方について教育委員会でしっかりと審議していただきたかったと思います。
少人数化は旭・三輪野江だけの問題ではない
市は2027年以降の予測も含め、2012年から2032年までの各小学校児童数の推移を示しています。そのデータを見るとどの学校も少人数化が進んでいくことが明確にわかります。旭・三輪野江小学校の問題だけではなく、市内全体の小学校の在り方について検討すべきだと考えます。
こども教育常任委員会で市は、現在開発を進めている美南駅東口の人口がこれから増えることが予測され、ある程度そこが見えて来てから全体計画を立てる方針だと説明しました。ならば、旭・三輪野江小学校の統廃合もその時に一緒に検討するべきではないでしょうか。

不登校児童の問題
市内小学校の不登校児童数は令和3年度の33人から昨年度は99人と、5年間で3倍になっています。令和4年の64人と比べても約1.5倍です。
社会心理学的には、少人数の方がストレスが少ないということが知られています。実際、普通の規模の学校から小規模校に転向したことで学校に行けるようになり、楽しく小学校生活を送れるようになったという事例は全国にたくさんあります。旭小学校の小規模化の問題は、不登校児童の居場所・学びの場の問題を考えるチャンスではないでしょうか。こうした視点からも、教育委員会で検討されるべきだと思います。
小規模学校での豊かな体験
これまで何度も書いていますが、私自身小学校の同級生は9名でした。入学時の全校生徒数は54人、卒業時は36人という文字通りの小規模校でした。
今回の統廃合を巡る議論の中では、少人数だと運動会もままならない、複式学級になったら十分な学習ができないというような意見もありました。
確かに50年も前の話ではありますが、私たちの小学校の運動会は文字通り地域ぐるみで、地域中の方が参加してとても楽しい運動会でした。
音楽では全校生徒で様々な音楽を演奏し、子ども音楽コンクールにも何度も出場しました。
複式学級でしたが、かつての同級生に私たちの小学校時代をどう振り返っているかと質問したところ、全員から「自ら学ぶ力が身に付いた」との回答が寄せられ、私自身もとても驚きました。
吉川市でも関小学校ができた当初、複式学級だったと聞きました。その生徒たちは中学に進学してから、とても優秀だったと聞いています。
こうした私自身の体験を考えても、人数だけの問題で性急に統廃合を進めるべきではなく、子どもたち・住民のみなさんとの十分な話し合いの上、合意の基に勧めるべきだと考えます。
