「シリア人質40カ月の真相に迫る 安田純平さん講演会

2019年10月24日

埼玉革新懇 講演と文化のつどい

埼玉革新懇(平和・民主・革新の日本を目指す埼玉の会)講演と文化のつどいが埼玉会館で開催されました。

安田純平さんのお話をどうしても聞きたくて行ってきました。

中東の詳しい歴史は、正直あまり馴染みがありません。5年ほど前にヨルダンを旅行したことがあって、その時には中東の歴史を必死で勉強したものでしたが、難しくてやっぱりよくわかりませんでした。

今回の安田さんのお話も、難しい歴史や国際情勢が背景にある上に、多岐にわたったお話で、やっぱり難しかったです。
が、興味深くもあり、私たちが知らなくてはいけないお話だったと思います。

国連安保理が
  内戦を止められない!

シリアの内戦が始まって、安田さんが最も危険な戦闘地だったらスタンに取材に入った2012年。安田さんは現地の人から、「お前は死ぬためにここに来たのか?」と言われたそうです。

ラスタンは反政府軍である自由シリア軍が治める地域で、既に自治が始まっていたそうです。自由シリア軍が提供した野菜が並んでいたり、市民の財産を守るために新しい法律も作られていました。
が、政府軍の砲撃が毎日続き、砲撃と隣り合わせの日常、戦闘や死が日常でした。
怪我人が出ても、川向うにある病院は政府軍に支配されていて使えず、地下に臨時の病院が作られていましたが、治療にあたる医師が命の危険にさらされていたそうです。
病院を砲撃することは国際法に違反しているのに、国連安保理もそれを止めることができない・・・。
国連安保理は支援物資を送ることはできても、内戦を止めるためには機能していないと安田さんは言いました。

ずっと戦争に関与している国、日本

「イスラム国」とは「イスラムの国をつくること」が目的の組織で、反政府運動の組織ではありませんでした。イラク戦争によって旧政権に関わっていた多くの人が公職を奪われました。その中でも過激な一部の人々がイスラム国を作っていったのだと思いますが、イラク戦争がなかったら、「イスラム国」は生まれなかったはずです。

ではなぜイラク戦争が起こったのか、そして日本はイラク戦争にどうかかわったのかが問われます。
アメリカがイラク戦争を始めたとき、世界中の多くの国々が反対しましたが、当時の日本の小泉首相はいち早く支持をしました。
「イラク復興特別支援法」を作り、復興支援という口実をもとに、自衛隊を派兵しました。派兵された自衛隊員は、人道復興支援と同時に武装したアメリカ兵を移送しました。
「後方支援は戦争ではない」と日本政府は言います。が、「そんなことを言っているのは日本だけ」と安田さんは断じました。
1人の兵士を100人で支えるのが戦争。後方支援体制がなければ戦争はできない。「後方支援」という名で、日本はずっと戦争に関与しているんだと、安田さんは言いました。



レジスタンスなのか、テロなのか

第二次世界大戦で、ドイツに占領されたフランスで「反ドイツ」「反全体主義」を掲げて戦ったのはレジスタンスでした。
誰もそれを「テロリスト」とは言いません。
シリアで民主主義を求めて独裁政権と闘う反政府軍は、「テロリスト」なのか「レジスタンス」なのか・・・。

都合の悪い人を「テロリスト」と言ってしまうと、その時点でその人の人権はゼロになり、超法規的に殺害することができてしまいます。
様々な手続きを踏み、裁判で「有罪」と認められなければ「殺人犯」ということはできません。
「テロリスト」というのは事実関係を表す言葉ではなく、権力側が「どう思っているか」という価値観を表す言葉だという安田さんの言葉が心に残りました。

「拘束」と「人質」は違う

戦争では、双方が相手側に情報提供者を作ります。だから、知らない人は「スパイ」と思われ、紛争地での拘束は日常茶飯事とのことです。紛争地で絶対に拘束されない唯一の方法は、現場を取材しなことです。
しかし民主主義の国をつくるためには情報は絶対に必要で、そのためには現場取材がやっぱり必要です。
そして「拘束」と「人質」とは全然違います。「拘束」は文字通り身体を拘束されることだけど、「人質」というには身代金の要求とか、何らかの要求と引き換えに開放するという話になります。
日本ではこれがごっちゃにされて報道されています。
安田さんも何度も捕まった人とか、誹謗中傷の報道がされ、政府が高い身代金を支払って解放された人のような情報が飛び交っていますが、事実とは全然違うそうです。
「人質」とデマを報道することによって、政府がお金を出すという誤った情報が流出してしまいます。
そうした誤った情報・デマによって、「お金が取れる」と思い込む人たちがいて、それによって今度は他の日本人が危険にさらされることに、危機感を持つべきです。

政府が何とかするということは,まずない国

2003年の人質事件は、自衛隊の撤退などが要求されました。官邸ではこの時、「彼らをヒーローにするな!」ということが言われていたそうです。
彼らは「危険地帯に勝手に行った迷惑な人」であるかのように報道されました。

安田さんの解放にも、日本政府は全く関与していないそうです。
身代金を払ったというのもデマです。
また、こういう時に「生存証明」を取ることが非常に大切なことですが、日本政府はそれすらも取るには取ったけれど、全く活用していなかった💦
「政府が何かするということは、まずない国と安田さんはきっぱりと断じました。