『トアとトゥオン』ベトナムコンサートプレ企画
ベトナムコンサートの約1カ月前には、プレ企画としてDVD『トアとトゥオン』の上映をしました。
このDVDはコンサートの企画者であるIFCC国際友好文化センターが製作したもので、『歪められた遺伝子』『それでも私は生きていく』に続いて製作した、ベトナム戦争の枯葉剤被害者の実相を描き出す作品です。
枯葉剤被害を受けた子どもは、胎児のうちに亡くなってしまう子がほとんどです。重傷者のほとんどが20歳前に亡くなってしまいます。生きている被害者は枯葉剤被害の証人であり、その存在自体がとても大切との思いを込めて作られた作品です。

被害者の現実
ベトナム北部地域に住むトゥオンは、生まれた時から神経皮膚黒色症を患っています。
全身が黒い皮膚でおおわれているだけでなく神経症状も強く、乳児期は痛みで寝ていることもできなかったそうです。
海外のボランティアから支援を受け、皮膚移植を繰り返しています。
今では顔や手などは本来の皮膚色がとりもどされていますが、洋服の下に隠れる部分は真っ黒です。とても疲れやすく、安定した仕事に就くことはできません。
トアは手指の多くが欠損しています。不自由な手で家事をこなしています。
被害の現実があるのに、支援の対象外
ベトナムの枯葉剤被害者は、投下された時にそこにいたことが証明されなければ支援も救済も受けることができません。枯葉剤はベトナム中部から南部に投下されました。補助対象は戦争中にその地域に従軍していた兵士か居住していた住民の本人とその子どもに限定されています。
トゥオンのお父さんは戦争には行っていません。戦争が終わってから、中部地域に復興支援に行きました。そして北部地域に帰ってから結婚してトゥオンが生まれました。お父さんは従軍も居住もしていないので、トゥオンは補助の対象外です。
トアのお父さんは枯葉剤が大規模に投下された地域に従軍していました。帰還後に生まれた子どもがトアです。
トアには兄弟がいますが、お父さんが従軍する前に生まれているので障害はありません。
枯葉剤は兵士の身体に蓄積され、直接投下されなかった北部にもちこまれたと考えることができます。
しかしその被害者たちは支援を受けることができません。そして被害者の介護を家族が抱え込まざるを得ず、貧困な暮らしへと追い込まれています。
チャリティコンサートは枯葉剤をまいたアメリカや、ベトナムの国としての支援が届かない北部地域に募金を送り、リハビリ施設の運営などに充てるために開催されています。
日本の山林に埋設された枯葉剤
枯葉剤を開発したのはアジア太平洋戦争で細菌部隊として暗躍した731部隊でした。
そのデータを基に、農薬や遺伝子組み換え作物で知られるモンサント社が製造しました。
ベトナム戦争で撒かれた枯葉剤に、日本は「中間製品の供給」という形で関わっていました(三井東圧=現三井化学)。
三井東圧の枯葉剤はその後日本政府・林野庁・農水省が買い取り、全国の山林に埋設されました。国所有の山林には今も「立ち入り禁止区域」がありますが、それが今どのような状態になっているのかチェックされていません。
ベトナム戦争で散布された枯葉剤は、日本で今を生きる私たちにも全く無関係な問題ではありません。
私たち日本人にも大きな責任がある問題です。そして戦争や、戦争で使われる化学兵器の是非について私たちも向き合って行かなくてはいけないのだと思います。
ベトナム・アンサンブル・チャリティコンサートを3年間続けてきましたが、このコンサートに向き合うことと戦争に向き合うこと、ベトナム戦争の日本の責任に向き合うことは全部一つのことだと思っています。
