「いのちのとりで裁判」、最高裁判決を受けた追加給付のはなし

2026年06月11日

6月の定例市議会には、「いのちのとりで裁判」の最高裁判決を受けた追加給付が補正予算として提出されました。今日の本会議で、賛成全員で可決しました。もちろん私も賛成しましたが、まだ課題が残されていると思い賛成討論をしました。

「いのちのとりで裁判」とは

2012年の衆議院選挙で「生活保護基準の10%引き下げ」を公約に掲げた自民党が政権に復帰し、13年8月から保護基準の引き下げが始まりました。約3年間で基準生活費は平均6.5%、最大10%の減額でした。
全国で1,000名を超える被保護者が「命が削られる」と訴え、生活保護法に基づく生存権(憲法第25条)の侵害を理由に、減額決定の取り消しや慰謝料の支払いを求めて提訴したのが「いのちのとりで裁判」です。

2025年6月27日、最高裁判決は本件引下げによる削減額の9割近くを占める「デフレ調整」の違法性を明確に認め、生活扶助基準引き下げ処分の取消しを命じるという前代未聞の画期的判断を示しました。
厚労大臣の判断の瑕疵をも指摘する内容でした。

この裁判は、生活保護基準の引き下げが憲法で保障された生存権に関わる問題であることを社会に示し、行政の裁量と司法審査の関係を明確化する重要な事件とされています。
全国での勝訴判決の積み重ねは、被保護者の権利保護の歴史的闘いとして位置づけられています。

残された課題とは?

生活保護の基準などは国が責任をもって決めるものであり、地方自治体に任されているのは法定受託事務のみ。生活保護事業の実施と決定が任されているとのことですので、今回の裁判結果に対し市に責任がないことは明らかです。それでも今回の補正予算には、いくつかの課題があると考えています。

まず第一に、追加給付はされるものの謝罪がないことです。

この引き下げは今の政府を担う政治家などからも受給者をバッシングする激しい発言が繰り返され、一般の国民にも生活保護受給者への偏見・バッシングを生みました。「生活保護なめんなよ!」というTシャツを作って生活保護担当職員がそれを着るというような自治体まで生まれました。受給をさせない、水際作戦の展開も大きな問題となりました。
何よりも、この減額は就学援助金や最低賃金など47もの制度に影響を及ぼし、多くの国民のくらしに影響を与えるものでした。その事実に対する謝罪がありません。

第二に、最高裁判決に応えて引き下げ処分を取り消し、追加給付する責任は国にあります。にもかかわらず通常の扶助費と同様に国が4分の3・市が4分の1として、交付税措置をされるとはいえ市に2千万円を支払わせる国の姿勢に疑問を感じます。

第三に今回の追加給付額は国が引き下げをした分の全額ではなく、半額に過ぎないと報道されていること。

第四に、裁判で指摘されたのは引き下げそのものの違法性だったにもかかわらず、原告になった受給者とそうでない受給者との間に支払額が2.49%差を付けられているという点にも疑問を抱きます。

いずれの課題も全て国が責任をもって解決するべき事実だとは思います。ただ、こうした問題を孕んだ議案であることは指摘させていただきました。

吉川市では職員による受給者へのバッシングや異常なまでの水際作戦の展開はなく、冷静な対応を続けていただいたとは思っています。

補足:生活保護に影響される制度

【教育分野】
 就学援助(給食費・学用品費・修学旅行費など) 高校授業料無償化の一部判定
 奨学金の一部基準  児童扶養手当の一部基準  保育料の減免基準

【労働・賃金分野】 
 最低賃金の改定(生活保護基準が"下限"の役割)  住民税非課税基準の一部 
 雇用保険の求職者支援制度の基準

【税制分野】
 住民税の非課税基準  医療費控除の一部判定  国保の軽減判定

【住宅・生活支援分野】
 住宅確保給付金  公営住宅の家賃減免  公共料金の減免
 災害時の被災者生活再建支援金の一部判定

 

 

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