日本の入管の問題を学びました

2021年05月14日

東京高裁で、31年前に日本に来て、日本で働き日本で生きてきたパキスタン人のモハメド・サディクさんに対し、耳を疑うような判決が言い渡されました。
サディクさんは反政府活動により命の危険に晒され、脱出して日本に来た方です。パートナーは乳がんを患い、いつまで生きられるかもわかりません。不法滞在とされ、退去処分とされていますが、「愛する妻の命を守るために残りたい」と願い、在留特別許可を求め裁判を起こしています。サディクさん自身も、パキスタンに変えれば、再びいのちの危険に晒されます。

そんなサディクさんが起こした裁判に対し、東京高裁はサディクさんの訴えを退け、「不法滞在中に結婚したのだから、強制送還による不利益は我慢すべきだ」と言い放ちました。
非常に悲しい判決です。
「勝手に日本に来て、勝手に不法滞在していたのだから、送還されて命の危険に晒されても仕方がない。それくらいの不利益は我慢しろ」、そう言っているように聞こえます。
乳がんの奥さんに対しても「不法滞在の人と結婚したのだから、一人淋しく死んでいくことくらい我慢しろ」「闘病を支えてくれる人がいないことくらいの不利益は享受しろ」、そう言っているように聞こえます。
血も涙もない判決だと感じます。

名古屋の入管収容施設で、スリランカ人の女性・ウィシュマさんが今年3月、十分な医療も受けられないままに亡くなった事件は今、国会でも大問題になっています。
ウィシュマさんは英語教師を夢見て来日したものの、交際相手からDVを受け、学校にも通えなくなり、昨年8月家を追い出され、救けを求めて警察に行ったところ、不法滞在として逮捕されれ、入管に収容されました。
普通に考えればウィシュマさんには何の悪意もなく、DVの被害者であり、家族に連絡をして迎えに来てもらうなりすれば、何の問題もなく母国に帰れたのだと思います。
でも、入管はそういう対応をしませんでした。
1月には体調を崩し、日々状態が悪化していくのに詐病を疑い、適切な医療を受けさせることもしませんでした。
死の真相を知りたいというご家族の意向に対しても、入管の対応はとても誠実とは言えないものだと感じます。

そしてショックなのは、ウィシュマさんのような亡くなり方をした人が決してウィシュマさんただ一人ではないという事実です。

『ある日の入管』(織田朝日 扶桑社)、『となりの難民』(織田朝日 旬報社)を読みました。

2010~2017年の8年の間に、法務省が把握しているだけでも174人もの外国人が日本で命を落としているそうです。長時間労働や、労働環境・生活環境の問題の中での「不審死」や「過労死」。
労災認定されているのはわずか2件とのこと。

公表されている入管での死亡事件は、1997~2019年の22年間で18件です。
自殺6件、医療放置による病死5件、病死4件、餓死1件、職員による暴行致死疑い1件、強制送還中の制圧による窒息死の疑い1件です。
これもショックなデータです。
今この時代に、外国人がこの日本の国の中で餓死しているとは・・・!!
適切な医療を提供しないままに亡くなった方も5人。
ウィシュマさんの事件は特殊なありえない事件ではなく、これまでも繰り返し起きていた事件だったのだと思います。
職員の暴行や制圧によっても亡くなっているという事実は衝撃です。
アメリカのミネソタ州で、アフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドさんが警察の暴力により亡くなったという残虐な事件を、遠い異国の驚くべき事件と受け止めていました。
でも実は、日本でも同じような事件が起きているのだと知りました。

もし収容された外国人が欧米人だったら、入管で同じような対応をするでしょうか?
収容されているのがアジアの国々の人だから、こんなひどい対応を平気でするのではないでしょうか?
外国人の方がこんな死に方をしている国、それが日本だと学びました。

祖国で命の危険が差し迫り、命からがら脱出し、日本に救いを求めてやってきた外国の方々を犯罪者でもあるかのように扱い、「生きる権利」という一番最低限の権利さえ侵害してやまない・・・。今でさえ、そんな現状の入管法です。
厳罰化するのではなく、なぜウィシュマさんが亡くなったのかを誠実に振り返り、二度と同じ過ちを犯さないように真摯に制度の見直しをするべきだと思います。