認知症高齢者の見守り体制の充実を

2021年09月29日

9月議会の一般質問で私が取り組んだことの一つは、認知症高齢者の徘徊の見守り体制の問題です。


2019年の認知症に関わる行方不明者は全国で1万7479人。統計を取り始めた12年の1.8倍となり、7年連続で過去最多を更新しています。

https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00773/
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00773/

行方不明認知症高齢者の死亡率は約3%

行方不明者のうち508名が亡くなった状態で発見されています。死亡率で考えると、約3%。コロナウイルスの死亡率は1%くらい。インフルエンザに罹患した高齢者の死亡率は0.03%くらいです。行方不明になって亡くなる方の割合の高さ、決して侮れるものではありません。

早期発見が大事

『日本老年医学会雑誌』に掲載された「認知症の徘徊による行方不明死亡者の死亡パターンに関する研究」という、東京都健康長寿医療センターの先生の2016年の研究ですが、この論文には徘徊により死亡に至るパターンが少なくとも3つあるとして、①行方不明後すぐに自動車事故などによる外傷や溺死,病状悪化などによって死亡するパターン、②数日間徘徊して徐々に体力を奪われた末に低体温症などで死亡するパターン、及びこれら2つに当てはまらない③その他のパターンというように書かれています。
できるだけ早期に発見することが死亡事故を防ぎ、行方不明状態の長期化による低体温での死亡も防ぐ、早期発見こそが認知症高齢者の徘徊対応の大原則ではないかと私は思っています。
また別の研究では、9時間以上を経過すると発見率は徐々に下がり、死亡につながるケースがあるともされています。

見守りネットワークの重要性

こうしたことを考慮して、認知症高齢者の見守りネットワークが作られています。見守りネットワークがあるかどうかで、発見の速さが違うのです。
見守りネットワークは行方不明になった高齢者を探すためのシステムではありませんが、誰かが行方不明になっているとの情報を知らせることが、市民の注意を喚起し、それが発見につながっているのです。
吉川市にも見守りネットワークがありますが、それが上手く機能していないと私は感じています。

吉川市のシステムでは不十分

以前にも書きましたが、今年1月末の冷たい雨が降るある日の夕方、おそらく4時ころ、ひとりの認知症高齢者の方が行方不明になりました。ご家族から連絡をいただいた私も友人たちと一緒に探しましたが、暗い雨の中、見つけることは出来ませんでした。
ご家族は警察に連絡しましたが防災無線放送も流れず、安全安心メールも流れず、もちろん見守りネットワークにも連絡されず、その方が発見されたのは翌日の午前2時でした。その時たまたまご自宅の電話番号を言うことができ、コンビニのスタッフさんからご家族に連絡がいき、見つかったのでした。
ご家族のお話では家を出た時と、発見されたときの傘が違っていたとのことでした。つまり、おそらくその方は救けを求めてコンビニなどの店舗に何度か立ち寄ったのではないかと思われます。ただ、救けを求めるための適切な言葉を見つけることができず、諦めてまた冷たい雨の中を歩き続けた・・・。だから傘が変わっていたのだと思います。
もし適切に見守りネットワークに連絡がいっていたら・・・。見守りネットワークには、市も積極的にコンビニさんの参加を求めています。行方不明の高齢者がいると連絡がいっていたら、コンビニや店舗の職員さん等への注意喚起ができ、もっと早く見つけることができたのではないでしょうか。

何が問題なのか

今のシステムは、認知症高齢者の方が行方不明になる➡警察に通報する➡警察が家族のもとに実調に来訪する➡警察に戻ってから、市の危機管理課に連絡をする(勤務時間内なら問題がないが、土日祝祭日夜間などは守衛室に電話)➡守衛室から危機管理課職員に電話➡電話を受けた職員が登庁し、警察のFAXを確認。ただしFAXの記載内容が不十分なことが多々あり、その確認に時間がかかる➡ご家族が防災無線放送を希望しているなら、放送を流すという仕組みです。
認知症高齢者の方が行方不明になるのは夕方が多く、ご家族はある程度探してから警察に通報します。警察が実調に来るまでにも時間がかかり、警察から連絡を受けた職員が登庁するまでにも時間がかかり、その上警察が市の危機管理課に送るFAXにも不備があり、その確認に時間が取られ、結局防災無線放送を流すタイムリミット20時を超えてしまう・・・。
警察のFAXの不備とは、例えば防災無線放送や安全安心メールに流しても良いかどうかのチェックがされていないとか、そういう問題だそうです。チェックしたものをもう一度送信してほしいと依頼しても、それがなかなか来なかったして時間がかかるのだと聞きました。
防災無線に流されなくても、せめて見守りネットワークへの連絡だけでもされれば良いのですが、それも今はされていない・・・💦
やっぱり、この仕組みを変えなくてはいけないのだと私は思います。

事前登録システムに変えるべき

多くの自治体で取り組まれているのは、事前登録制です。
認知症高齢者のご家族がいなくなったとき、警察に通報すると同時に市役所にも連絡をするのです。そうすると、警察からのFAXに不備があろうとなかろうと、警察は警察で捜索するという本来の動きをつくり、市役所は市役所で防災無線放送や安全安心メールへの連絡、見守りネットワークへの連絡と独自の動きをスムーズに始めることができるはずです。そこで節約できる時間は、相当なものなのではないでしょうか。

広域に捜索できる仕組みが必要

今の仕組みは、行方不明の当日は吉川市の見守りネットワーク協力事業所への情報提供・協力依頼を行い、それでも発見されなかった場合通常翌日に隣接する市・町に協力を依頼、更にその翌日に埼玉県徘徊高齢者等SOSネットワークを通じて県内全市町村へ協力を依頼するという形です。
しかし先ほど挙げた事例の方は翌日早朝?お隣の三郷市で発見されており、また当日三郷市や松伏町、越谷市などで発見されたこともあります。近隣市町と隣接した地域にお住まいの方なら、その近隣市町が元々の生活空間ということも考えられます。
翌日になって近隣市町に連絡するというのでは遅いと思うのです。
当日のうちに連絡する仕組みが必要ですし、守口市などそういう仕組みを既に作り上げている自治体もあります。
吉川市でも、近隣市町に早急に連絡する仕組みを作るべきだと思います。

今後の対応に期待

私の今回の一般質問に対し子ども福祉部長は、「見守りネットワークについてはこれが十分と思っているわけではない。高齢部門とも今後話をしていきながら、できるだけこの事業が良い形で活用されるよう取り組んでいきたい」と答弁しました。
今後どのように見直していただけるのかとても不安ですが、認知症高齢者のかたが行方不明になり亡くなるような事態が吉川市で発生しないように、十分な対処をしていただくことを心から期待したいと思います。