重度障がい者の支援ができる介護職員をどう増やすのか

2020年09月15日

またまた、重度訪問介護の話です。

重度障がいの方に訪問可能な介護職員の不足は、かなり深刻だと思います。
実は一口に「訪問介護」と言っても、重度障がい者の方への訪問介護と、介護保険での高齢者の方への訪問介護とはかなりの違いがあるのです。
私も「訪問介護」ではなく「訪問看護」の仕事でしたが、その仕事を通して難しさを感じた経験は、それこそ山のようにあります。

ある神経難病の方で、ご自分ではほとんど身体を動かすこともできないし、言葉を聞き取るのも非常に困難な方のところに訪問したときのことです。
その方のお身体をきれいに拭いたり頭を洗ったり、更に必要な医療的なケアをして、それだけでも2時間近くかかって、さぁ帰ろうとしたときでした。「では、また明日来ますね」と声をかけたとき、「あ・・・」と、「あ」だけは間違いなく聞き取ることができました。
「はい、明日来ますよ」と答えてみたのですが、どうもそうではないらしい反応でした。
「あ」・・・。
何のことだろうと悩んで悩んで悩み続けて30分以上が経過したとき、ようやく「足の位置をもう少し外側にずらしてほしい」ということだとわかりました。
あの時、その方の「あ」に気づかぬふりして立ち去ることも可能だったかもしれません。でも、喋れないのに必死で吐き出した「あ」を、誰が無視することができるでしょうか。
重度障がいの方への訪問介護、支援というのはそういうもので、非常に繊細な要望があり、その一つ一つを受け止め支えていくには、支援する側にも相当なエネルギーが求められるのだと思います。
正直言って関わる人はそこでかなり疲弊するし、事業所はその個々人の疲弊も含めて引き受けなくてはならない・・・。
それでも上手く支援することができたときの悦びも非常に大きく、障がいの重い方を在宅で支えるというのは、そういう事だと感じます。

今、こういう障がいの重い方を支える介護職員の不足が非常に深刻です。
その理由の一つには、重度訪問介護という障がいの重い方を支える介護報酬の安さがあると思います。
そしてもう一つには、介護職の資格を取りながらも介護に従事している職員は85%程度とも言われていて、そもそも介護職員が深刻に不足しているこ とだと思います。
そしてそういう状況の中で、こうした大変で難しい仕事に対応できる介護職員や事業所は更に少ないという問題も事実だと思います。
更に介護職員の高齢化なども拍車をかけているのかもしれません。
こうした状況を、どう打開していくのかが問われていると思います。

介護職員の不足は吉川市だけの問題ではなく、全国的な問題です。
そしてその背景には、介護の仕事では暮らしていけない、介護職員の待遇やそれを支える介護報酬の問題があると思います。
市だけでは、決して解決できない問題だと思います。
しかし、市が解決に向けて動き出さなくては、決して解決されることのない課題だとも思います。
県や国に働きかけて、介護報酬の改善や介護職員を増やすために何をするべきか、本気で考えていただきたいと思うのです。
重度障がい者の方々が病院ではなく自宅で生活できるようにしていく、そして生活の質・人生の質を保障していこうという政策、これは国の方針に基づき進められているものだと思います。
それならば、その生活を保障するために介護職員をどう増やすのか、そのための施策を考えるのも国が責任を負うべきだと思います。

今、市内で実際に重度訪問介護サービスを利用する方が、こうした深刻な状況の中で困っています。
重度訪問介護に対応できる事業所や介護職員さんがいないという中で、在宅療養の継続が危機に瀕している方がいらっしゃるのです。
ケアマネさんがローラー作戦で、介護事業所の一覧表の上から順番に全部電話をかけまくって、それでも対応してくれる事業所をなかなか見つけることができない・・・。
重度訪問介護サービスが提供されないために、否応なく入院や入所が求められてしまっている・・・。
そんな状況が実際に生まれています。

こうした状況を改善するために努力していただきたいと思うのです。

文教福祉常任委員会では、このことをしっかりと要望させていただきました💕